相続の基礎的部分
だれが相続人となるのか、どのようなものが遺産として引き継げるのか、どのくらい相続できるのか?
民法はこのようなことについて規定しています。
配偶者 | 常に相続人となる |
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子・孫・ひ孫 | 第1順位相続人 |
父母・祖父母 | 第2順位相続人 |
兄弟姉妹・甥姪 | 第3順位相続人 |
相続人:妻・実子・養子
相続人:父・母
祖父母もいない場合は、兄弟姉妹が相続します。
相続人となるの?相続人であるとしてもどのように遺産分割協議するの?
胎児 | 胎児は相続については生れたものとみなされますので、相続権があります。 |
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非嫡出子 | 非嫡出子は嫡出子と同じ相続分(平成25年9月5日以降に開始された相続に適用)があります。 |
養子縁組後に生まれた子 | 縁組後の養子の子供は代襲相続できます。 |
行方不明者や生死不明者 | 相続人の中に行方不明者等がいる場合は、家庭裁判所の許可などの手続が必要になります。 |
未成年者 | 相続人の中に未成年者がいるときは、未成年者の親権者が法定代理人として協議に参加することになりますが、その親権者も共同相続人である場合は、利益が相反することになりますから、このような場合は、家庭裁判所にその未成年者のために 特別代理人を選任してもらって、その特別代理人が分割協議に加わることになります。 |
相続人の存否が判明しない | 家裁に相続財産管理人を選任してもらいます。 相続財産管理人が調査を行い、相続人の不存在が確認されたら、法定相続人でなくても被相続人に特別の縁故のあった人は家裁に財産分与の申立をすることができます。 |
意思能力が不十分 | 認知症など意思能力が不十分な者がいる場合は一定の手続きを経て、この者に代わって協議に参加する者が必要になります。 |
相続欠格者や相続人廃除の審判がなされた場合は相続人から除外され相続できません。これらの場合、代襲相続はあります。
一方、相続人自身の意思で相続しない選択をする相続放棄の場合は代襲相続もありません。
遺言による相続分の指定(指定相続分)がない場合、各相続人の相続分は民法によって規定されています。これが法定相続分です。
相続人 | 相続割合 |
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配偶者 + 子 | 配偶者:2分の1 / 子:2分の1 |
配偶者 + 親 | 配偶者:3分の2 / 親:3分の1 |
配偶者 + 兄弟 | 配偶者:4分の3 / 兄弟:4分の1 |
同順位の相続人が数人あるときは、各自の相続分は等しくなります。
ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1になります。
*話し合いにおいては、必ずしも法定相続分で分割する必要はありませんが、ここでの意見の対立がいわゆる「争族」の大きな原因の一つです。
→「特別受益・寄与分」 をご覧ください。
自己の意思で、相続分を放棄したり相続分を譲渡したりして、遺産分割協議から抜けることができます。
相続財産には、「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。
相続財産にならないものもあります。
相続財産の調査は、遺産分割の対象になりますし、相続放棄の検討のためにも正確に行うことが必要です。
プラスの財産 | 現金、預貯金、有価証券、土地、家屋、借地権、家財、自動車、貴金属、骨董・美術品、収集品、ゴルフ会員権、特許権、著作権など |
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マイナスの財産 | 借金、住宅ローン、未払い金(月賦・税金・家賃・医療費など)など |
対象とならない財産 | 一身専属的な権利や義務、墓地、墓石、仏壇、祭具など |
普段行き来がない等で、被相続人の財産が把握できない場合もあります。
以下の書類等を基に、被相続人名義の財産を調査します。
・不動産・・・固定資産税納付通知書、権利証、名寄帳など
・預貯金・・通帳、通帳の履歴や郵便物等をもとに取引のありそうな金融機関に取引履歴の開示請求をするなど
・金融商品・・・確定申告書の控え、通帳の取引履歴、郵便物(取引報告書など)
*相続財産の存在が判明したら、それぞれ残高証明書を取得する。
・債務・・通帳の取引履歴、郵便物(請求書、催促状など)
相続開始を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄や限定承認の手続をとらない場合、被相続人の権利義務を全面的に承継することになります(単純承認)。相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したとき等も単純承認したものとみなされます(法定単純承認)。そうすると、以下の、放棄ができなくなり、プラスだけでなく、マイナスの財産も相続することになります。
相続財産のうち借金の方が多い場合、相続人は家庭裁判所に申述することによって、相続放棄をすることができます。この場合、プラスの財産も全て放棄することになります。、相続開始を知った日から3ヶ月以内という期限があります。 ただし、3ケ月を過ぎてしまった場合でも相続放棄をできる場合もあります。
相続財産のうち、プラスが多いのかマイナスが多いのかわからない場合は、放棄をするか否かの判断がつきません。このような場合、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を相続し、それ以上のマイナスの財産は相続しないという方法があります。 これが限定承認です。ただ、共同相続人の全員が共同で手続する必要があり、また家庭裁判所を通した複雑な手続きになっています。
遺産は、相続開始と同時に相続人の共有となります。 この共有である遺産をどのように分けるのかについては、必ずしも法定相続の割合で分ける必要はなく、各々の相続人の事情を考慮して自由に話し合うことができます。 各々の相続人の事情とは、どのような事情でしょうか?話し合いがなかなかまとまらない原因があります。遺産分割協議へ